「さくら!」口をつぐんだ幼女は口を開きました。

おはようございます。桜の花がきれいですね。

20年前、ボクの師匠は親と子の勉強会を主宰していました。一つのご家庭に近隣の子供たちとその親が集まり勉強の方法を指導する出張指導塾です。

その当時のことをボクは昨日のように覚えています。いくつかの勉強方法を確認し合いながら、個々に自学自習を進めます。時おり全員で勉強の感想を言い合います。その生徒さんの一人に2歳ほどのお嬢さんがいました。お母様のひざの上でキョトンとしているだけだったのですが、師匠は他の子と同じように感想を求めました。

予想されることですが、感想など言えるはずがない。と、そう思いました。その部屋に居合わせた誰しもがそう思っていたかも知れません。その空気感に包まれながら、しばらく沈黙が流れました。何も変化は起こりません。幼女は口をつぐんだままです。でも師匠は静かに待ち続けました。

そして数分後、その幼女は口を開きました。

「さくら!」

幼女はひと言、つぶやきました。手に持っていた一枚のさくらの花びらを少し高めに差し出すように、顔をいきいきと輝かせながら。うしろのお母さんは赤面でしたが、その場に居合わせた十数名の教室の生徒さんは拍手喝采。

「さくら!」

そのひと言が20年の時を経て、今なお新鮮に響きます。Facebook などで鮮やかなお写真がタイムラインに流れてくるたびにその子のひと言がふと思い出されたりもします。

口ごもりから開くその一瞬まで、静かにそれを信じて待ち続ける心を養いたい。養い続けて人の気持ちの分かる人間になりたい。そう思います。

さくらと口を開いたそのお嬢さんも今や二十歳を越えて立派な大人の仲間入りです。今はどうしているのだろう?

PS.
7年前にもこの時のことをブログに書いておりました。

【 師 ・ 工藤張雄(クドーハルヲ)先生 】 ちょこっとを大切にする(ただ今、再建中です。)

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