『100万人から教わったウェブサービスの極意』(藤川真一著)書評

『100万人から教わったウェブサービスの極意』藤川真一著(モバツイ開発者)ヒューマニズムにあふれる一冊です。

「モバツイ」の開発者、藤川真一氏(以下、えふしんさん)の初の単著ともなる新書『100万人から教わったウェブサービスの極意』(技術評論社)を送って頂きましたので書評します。

その著者の藤川さんこと えふしん( @fshin2000 )さんは、一人で始めたサービス「モバツイ」というツイッターを携帯電話から投稿できるサービスにより、国内のツイッター普及に大きく貢献された草分けの人です。

同書はツイッターの国内における創生期の頃から現場に関わってきた視点で、これからネットベンチャーとしてチャレンジをしようとしている方の啓発書となっています。

同時に、一般の方にもツイッターのウラ事情にまで踏み込んだ、その楽しさと深さを伝える一冊となっています。読み終わった後もしばらく軽い興奮が心地よく残りました。

「モバツイ」サービスがどのようにしてブレイクしたか。単にその成功物語ではなくて、むしろ予断を許さない日々が今も続いていることを伝える迫力ある一冊となっています。

「今はまだ食うか食われるかの緊張状態が続いています。・・・・」(p.78)

[ Index ]
□ ユーザーと一体感があったからこそできた
□ ツイッターが自分に合っている・・・・
□ ツイートを楽しみ始めていました


■ ユーザーと一体感があったからこそできた

書籍のタイトルは「100万人から教わった」とありますが(インパクトありますもんね。^^)、えふしんさんは「最初は毎日10人が使ってくれるサービスを意識してみる。」(p.188)と、やさしい言葉を投げかけてくれています。

この書籍の読み応えは随所に感じられますが、ぐぐっと引きこまれて一気に読み進めてしまったところの一つが、モバツイを始めた頃のユーザーさんたちとのフレンドリーなコミュニケーション。ソーシャルデバッグの経験が面白いです。

「ユーザーとの一体感があったからこそできた。・・・・」(p.167)

「新しいプラットフォームは、ユーザー数が少ない分、ユーザーとの対話がしやすく、試行錯誤を許される雰囲気がある。」(p.182)

「初期のユーザーは、驚くほど積極的に要望を伝えてくれます。・・・・」(p.192)

さまざまな視点・立場からの考察がなされているのも読みどころの一つとなっています。

えふしんさんの技術は数多くのユーザーさんたちの笑顔と歓喜をもたらせてきました。その日々の地道に積み重ねてこられてきた結果、今日に至るのでしょう。

その克明な記録はこれからWebサービスにチャレンジしようとしている方だけでなく、一ツイッターユーザーとしても、その生き様に啓発されることが多いはずです。技術者を対象とした記述が一部あっても、その内容は一般の人にも十分に理解できる文章運びです。ぜひご堪能下さい。


■ ツイッターが自分に合っている・・・・

えふしんさんがモバツイを始めるきっかけとして、

「サービスを作りたいという気持ちと、ツイッターが自分に合っているという二つの気持ちが混在していた」(p.186)ことを上げています。

ネットビジネスに限ったことではないかも知れませんが、何かを成就させるのに「やりたいから」「好きだから」という気持ちが、その可能性を強力に推進させていくのは事実でしょう。

その一途に「好き」を貫き通せるのもまた大切な能力です。「自分に合っていた」とえふしんさんはさらっと流していますが、そう直感しうるのに相応しい深い洞察もまた、この書籍の随所に散見します。

「(APIは)その提供が戦略的に行われ、何を外部に公開すべきかという選択は重要な意味をもちます。・・・・」(p.42)

「リアルのほうが・・・・バーチャル。・・・・」(p.59)

「最新のタイムラインは “ 限りなく今に近い過去 ” です。・・・・」(p.69)


■ ツイートを楽しみ始めていました

えふしんさんのこの『100万人から教わったウェブサービスの極意』を読み進めていくうちに、素朴にツイートを楽しめる自分に戻り始めていました。じつはしばらくツイッターから遠ざかっていたのです。

ツイッターユーザーでない人も、ユーザーの人も。

サービスを受けている人も、サービスを提供している人も。

ぜひ読んでほしい一冊です。

同書を読みながら次第に、えふしんさんの躍動感あるリズムが伝わり、ワクワクしてきて今よりもきっと、もっとツイートがしたくなってきます。^^

渡邉 義一( @Ghichi

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